富岡鉄斎
四季山水図
Tomioka Tessai
Landscape
掛軸 紙本 各151,5cm×35cm(総丈各207cm×37cm) 箱入 富岡鉄斎鑑定委員会鑑定書取得保証致します。
作品の状態について
画面、表装ともに良い状態です。
【春】
野人不敢求他事唯借泉聲
伴醉眠 鐵齋外史
〈読み〉
野人敢へて他事を求めず、唯だ泉声を借りて
醉眠に伴はしむ。鉄斎外史。
〈語注〉
◯野人=田舎に住む人。
〈大意〉
山里に暮らす私は、あえて他に何も求めず、ただ泉の音を借りて、酒に酔って眠るときの友としている。
【夏】
眞是深山古木平十餘年裏幾回行
山名毎問無人識木石原来能避名
余得陳老蓮集中有此詩感而録此
明治丗九年八月畫
鐵齋外史
〈読み〉
真(まこと)に是れ深山 古木平(たい)らかなり、十余年裏 幾回(いくかい)か行く。
山名 問う毎(ごと)に 人の識(し)る無く、木石原来 能く名を避(さ)く。
余は陳老蓮の集の中に此の詩有るを得、感じて此(これ)を録す。
明治三十九年八月に画く。鉄斎外史。
〈大意〉
本当にここは深い山で、古木が生い茂り、そのあたりはなだらかにひらけている。この十余年のあいだに、私は何度ここを訪れたことだろうか。山の名を人に尋ねても、知る者はいない。
もともとこの山の木や石は、世に名が知られることを避けるかのように、ひっそりと存在している。
私は陳洪綬(陳老蓮)の集の中にこの詩を見出し、深く感じてこれを録した。
明治39年8月、富岡鉄斎外史これを画く。
【秋】
秋山訪友
鐵齋外史
【冬】
雪溪小隠
鐵齋外史
〈語注〉
◯雪溪=雪におおわれた渓流。
〈解説〉
四季の移ろいを楽しんでいただける作品(全4幅)です。夏幅は明治39年(1906)8月、鉄斎が71歳のときに描いたもので、他の春・秋・冬幅も同時期に制作されたと考えられます。
春幅は、花が咲き乱れるうららかな春の一日を描いています。茅屋の中では、椅子に腰掛けて泉のせせらぎに耳を傾ける隠逸の高士の姿があり、門前では童子が箒を手に掃き清め、川では投げ網で魚を捕る漁夫の様子も見られます。こうした情景は、簡素な暮らしの中にありながら満ち足りた境地、すなわち自然とともにある心の豊かさを示しています。
夏幅は、清澄な空気と静寂を感じさせる一幅です。飛瀑を前に、崖の張り出した場所に二人の高士が座し、茶を酌み交わしながら静かに語らっています。奥深い山中でありながらどこか安らぎが感じられ、俗世を離れた心の落ち着きがうかがえます。
秋幅は、山や木に施された明るい代赭の色彩によって秋の情趣が表されています。高山の麓に庵を構える友を訪ねる人物の姿が添えられ、静かな山中に人の気配が加わり、しみじみとした趣を生み出しています。秋の落ち着いた風情がいっそう引き立てられています。
冬幅は、雪深く清らかな自然の中で、世俗を離れて静かに暮らす隠者の姿を描いています。背景に薄墨を刷くことで降り積もる雪の白さがいっそう際立ち、雪溪には音のない冷ややかな空気が漂います。あえて厳しい自然の中に身を置くことで得られる、静謐な隠遁の境地が表されています。(Y)
作家について
富岡鉄斎(1836〜1924)は、京都に生まれた日本画家。
「万巻の書を読み 万里の道を行く」の座右の銘を実践した鉄斎の作品は、壮大なスケールと存在感を放っている。
画は勿論、国学・儒学を修め、幕末には...
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