白隠慧鶴
徳山像
Hakuin Ekaku
Tokuzan
掛軸 紙本 121cm×51cm(総丈215cm×64,8cm) 箱入
作品の状態について
画面に少し修復跡があります。
表装は良い状態です。
70歳代に描かれた作品です。
折佛殿兮咬猪狗肚
皮荆棘看參天賣油
𩝐婆目成後掛牌渡
兒吹毒焰龍潭水
底欠三尺象骨室
中隔八千同床生
也同牀死野鬼張
眉數紙錢
〈読み〉
仏殿を折りて猪狗を咬み、肚皮の荆棘 天に参(まじ)はるを見る。
油𩝐を売るの婆 目成の後、牌を掛けて渡るの児 毒焔を吹く。
龍潭水底三尺を欠き、象骨室中八千を隔つ。
同床に生まれて也た同牀に死す、野鬼眉を張るも数紙銭。
〈大意〉
仏殿を破却して外道を噛みちぎり、腹に蓄えたトゲは天まで届くほどだ(それほど険しく鋭い人である)。
揚げ餅を売る老婆が目配せして互いに黙契の後、看板を引っ提げて諸山に行脚する小僧(徳山)は、ほうぼうで毒焔を吹き出だす(難問を老師たちに吹っ掛ける)。
龍の棲む淵の水底は三尺に満たず(師匠の龍潭の度量は些か不足と見え)、象骨山の庵室は千仞の切り立った崖の上にある(弟子の雪峰の機鋒ははなはだ尖鋭だ)。
鋭い雪峰も見劣りするかのごとき龍潭も、実は同じ床に生れて同じ床に死ぬ(何の選ぶところもない)。幽霊が眉毛をつり上げて怒って見せたところで、幾らかの紙錢を燃やしてもらえるだけだ。
〈注釈〉
*この賛、『白隠和尚全集』第二巻(竜吟社、1934)に収める。若干異同がある。第1句「折」、全集作「拆」。第7句、全集作「同條生也同條死」。
◯拆佛殿=偶像としての仏像ではなく、生身の仏性そのものに目を向けさせるために仏殿を破却したということ。いわゆる『百丈清規』(『景徳伝灯録』巻六百丈懷海章・附録)に仏殿を営まず法堂のみを建てるとあるのも同じ趣旨。徳山の逸話としては「潭州白鹿山靈應禪寺大佛殿記」(『石門文字禅』巻二一)に徳山が「比丘の行脚は、當に正眼を具ふべし。誦經・禮拜するは乃ち是れ魔民、殿宇を營造するは又た魔業を造るなり。且つ天下は惟だ一君一化を奉ずるのみ,豈に二佛の居る所を容れんや。」と言って「大殿を撤去し、獨り法堂を存」したとある。『五家正宗賛』巻一「德山見性禪師」に「誠所謂拆佛殿、咬猪狗、不近人情底老尊慈。(誠に謂はゆる「拆佛殿、咬猪狗」、人情に近からざる底の老尊慈なり)」とある。次の「咬猪狗」と共に、これに基づくであろう。
◯咬猪狗=外道を真正面から喝破し教導すること。「猪狗」はブタやイヌ。『碧巌録』第七十九則・本則評唱に「咬豬狗底手脚、須還作家始得。(豬狗を咬む底の手脚は、須く作家に還して始めて得(よ)し。)」とある。
◯肚皮=腹のうち。心の中。また、全身全霊、満身。
◯荊棘=とげ、いばら。外道のことを指す場合もあるが、ここでは修行の辛苦や機鋒の鋭さを言う。
◯油𩝐=𩝐は糍に同じく、餅。油𩝐(油糍)は揚げ煎餅のようなもの。「ごま餅とも、あん餅とも、また団子の油揚げ、あるいは饅頭の油揚げともいい、諸説一定しない。」(中村元『広説仏教語大辞典』)。「油糍を売る婆」は『碧巌録』第四則、本則評唱に見える。もと西蜀で『金剛経』を講じる講僧であった徳山が馬祖禅の主張を耳にし、自らこれを論破しようと思い立って出かける。その途次、湖南の澧州に到って油糍売りの老婆と出逢い、老婆に問答を仕掛けられて応えられず、龍潭崇信に参じることになる、という話。
◯龍潭水底=徳山が最初に参じた龍潭崇信の山名にかけて、龍の棲む潭の意味と二重の文脈を成す。こうした「龍潭」の使い方は、『呆庵莊禪師語錄』卷五・頌古にも「千古龍潭水渺瀰、德山親到更何疑。」とある。この白隠の賛では「象骨室中」と借対を成す。
◯象骨室=象骨山すなわち雪峰山、そこに住した雪峰義存のこと。雪峰は徳山の弟子。「雪峰山にあって、その形が象の骨のような人に与えた名称。雪峰義存のこと。[出典]〈『従容録』二巻大四八巻二四一上〉」(『広説仏教語大辞典』「象骨巖」)。雪峰は徳山に参じ、兄弟子の巖頭と共に行脚の後、閩(福建)に落ち着いて象骨山に住した。『碧巌録』第二十二則の頌(雪竇頌古)に「象骨巖高人不到、到者須是弄蛇手。稜師備師不奈何、喪身失命有多少。(象骨は巖高くして人到らず、到る者は須らく是れ弄蛇手。稜師・備師は奈何ともせず、喪身失命するもの多少有らん。)」とある。雪峰の機鋒の鋭さを象骨巖の峻厳さに喩え、これにやりこめられなかったのは雲門くらいで、長慶慧稜も玄沙師備も何ともできなかった、と言う。但し圜悟の評唱は三人の間に実力・境地の差はなく、ただやり口に遠い近いがあっただけだと言っている。ともあれ、「象骨室中隔八千」は雪峰の禅機の鋭さ、険しい厳しさを言うのであろう。
◯野鬼=祭祀されずにさまよっている霊魂。
◯紙錢=中国で死者の弔いに焚く銭型の紙。陪葬することもある。
〈解説〉
徳山とは、中国唐代の臨済宗の僧、徳山宣鑑(780〜865)のこと。剣南(現在の四川省)に生まれ、俗姓は周氏。『金剛経』の研究に精進し、「周金剛」と称されました。のちに龍潭崇信に参じてその法を嗣ぎ、咸通六年に遷化、享年八十六歳。諡号は見性大師。
本図は、とりわけ痛棒を与える厳しい指導で知られ、「徳山の棒」と称されたことにちなみ、修行者を導く際に用いた棒を手にし、峻厳な表情で描かれています。
賛では、首聯・頷聯において、徳山にまつわる故事を通して、その人となりや歩みが振り返られています。続く頸聯では少し趣向を変え、師である龍潭崇信と、弟子の雪峰義存を引き合いに出し、徳山の位置づけが示されます。そして尾聯では、特定の典拠に頼ることなく、白隠慧鶴自身の徳山観が、やさしい調子で語られています。人は賢愚や利鈍にかかわらず、みな生まれては死んでいく―そのありのままの生死こそが、仏の本性そのものだという見方です。怒ったような眉の幽霊の姿は、そうした真理とは対照的な、どこかユーモラスな裏返しとして描かれているのでしょう。(Y)
作家について
白隠慧鶴(1685~1768)は、日本臨済禅中興の祖と称される重要な禅僧。
駿河に生まれた。15歳で出家、臨済宗の禅僧となる。各地を巡歴して修行を積み、33歳で郷里の松陰寺に帰り、住職なる。本格的に書画を手が...
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