伊藤若冲 (いとうじゃくちゅう)
伊藤若冲(1716~1800)は、京都錦小路の青果問屋に生まれる。23歳で家業を継いだが、40歳の時に家業を弟に譲り、絵画制作を主とする暮らしへと転じた。作品は、独特の構図と形態描写がいかんなく発揮された色鮮やかな着色画と大胆な構図の水墨画が主である。若冲には、市中で煎茶を売った黄檗僧として知られる売茶翁や、相国寺の禅僧、大典顕常との交友があった。畢生の大作といえる作品が、「動植綵絵」である。1757年から1766年頃までの約10年をかけて描かれた、30幅からなる着色画である。
植物や鳥獣、昆虫、魚介など多用の生き物が表されたこの作品は、仏の空間を表現したものであり、あらゆる生き物を尊ぶ仏教の生命観に根ざしていると言える。